AIやIoT技術の発展により、さまざまな情報をリアルタイムに取得・解析する技術が重要になっています。近年では、物理現象そのものを計算資源として活用する「Physical AI」と呼ばれる考え方も注目されており、現実世界の情報を高精度に取得するセンサの役割はますます大きくなっています。特にガスセンサは、呼気診断による健康状態の把握や環境モニタリング、安全管理など幅広い分野での応用が期待されています。一方で、ガスセンサを含む化学センサは、他の物理センサと比べて発展途上にあり、高感度・高選択性・高速応答・高信頼性を同時に実現することに加え、モバイル・ウェアラブルデバイスへの搭載に向けた小型化と低消費電力化が求められています。そこで本研究では、グラフェンやカーボンナノチューブ、2次元材料といった低次元ナノマテリアルに注目しています。これらの材料は、原子レベルの構造と大きな比表面積により、周囲環境のわずかな変化にも敏感に応答するという特長をもち、優れたセンシング材料として有望です。本研究では、これらのナノ材料の作製・構造制御技術を基盤とし、異種材料とのハイブリッド化や光・プラズモンとの融合によるセンサ性能の向上に加え、マルチセンサ化と機械学習を組み合わせたガス種識別性能の高度化に取り組んでいます。
これまでの研究において、金属イオンと錯体形成可能な特殊なリガンド分子をSWNTに修飾し、配位金属種を変えることで、ガス種ごとに異なる応答特性を付与できることを明らかにしています。これらのセンサの応答を組み合わせることで、類似した特性を持つガスの識別検知が可能となります。また、2次元半導体である二硫化モリブデン(MoS2)を用いたガスセンサでは、可視光照射下で応答させることで、室温で高速な応答・回復を示す光活性化ガスセンサの作製にも成功しています。現在は、マイクロLEDとの一体化による超低消費電力ガスセンサの実現に取り組んでいます。